秋の掛軸

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秋の掛軸とは

「秋風に たなびく雲の たえ間より もれいづる月の 影のさやけき」(左京大夫顕輔) 秋風に吹かれてたなびいている雲の切れ間から、もれでてくる月の光は、なんと清らかで澄みきっていることであろう。 さわやかな歌ですね。小倉百人一首でもよく知られています。

「もののあわれ」という自然観があります。何を美しいと感じ、何に情感を見いだすか。

どのような行いに「粋」をあらわし、人や自然とのふれあいに忘れえぬ一瞬を心に刻ませるのか。

あふれでる思いと潔い引きの間には、「俯瞰(ふかん)」を経て辿り付く「達観(たっかん)」の美があります。

「詫び寂び(わびさび)」という美意識もあります。不足の中に充足を見いだそうとし、閑寂の中に奥深いものを感じる。

「詫び」という不完全さを受け容れる内面的な豊かさ、「寂び」は外見的に枯れたものに本質の美を見いだします。 寂しい様子や感情は「精神的な豊かさ」と捉えられます。

秋とは日ごろ忘れている何かを呼び起こします。心の置きどころを美しい自然にゆだねる人もいるでしょう。 深い思いに耽る(ふける)ことは癒しをもたらします。

人はたくさんの事がらと巡り合い、さまざまな人と出会います。「袖振り合うも多生の縁」といわれます。

気にもとめないこと、通りすぎてゆく人、気になって仕方がないこと、絆を結ぶ人。

雲の切れ間から見た月の光も、明け方に見た美しい花も、すれちがった人も、すべては偶然だったのでしょうか。

秋の掛軸にはしみじみとした「味わい」があります。季節もの掛軸の中でも特に秋ものは「情感の美」を意識して選びたいものですね。四季の移り変わりによる草木や樹木などの紅葉、実りを感じさせる果実などがあります。

秋の風物詩

金木犀(きんもくせい)の甘い香りがするころ、風雅な観月を取り入れた十五夜があります。

秋は行楽の季節でもあります。紅葉狩り(もみじがり)や秋の七草を見て歩いたりして楽しみます。

季節の掛軸

四季折々。春夏秋冬。秋。ここでは、季節掛けの四季のうち、秋にかける掛軸として紅葉(こうよう・もみじ)、菊の掛軸をご紹介します。

紅葉(こうよう・もみじ)の掛軸

紅葉の掛軸は9月から11月頃まで掛けます。北の国からすこしずつ南の国へとひろがる葉の色づき、赤色にかわる「紅葉(こうよう)」、黄色にかわる「黄葉(こうよう)」、褐色にかわる「褐葉(かつよう)」がありますが、これらのすべてを「紅葉」とされたりもします。

万葉集で歌われている紅葉とは、「黄葉」がほとんどです。「もみじ」は名詞ばかりではなく、葉の色づく過程や様を動詞の「もみづる」としても使われていました。

「手折(たお)らずて 散りなば惜しと 我が思いし 秋の黄葉(もみち)を かざしつるかも」(橘朝臣奈良麻呂)

手折らずに散ったら惜しいとかねがね思っていた秋のもみじを髪にさせました。

葉の散りゆく姿は盛りを過ぎた状態ではなく、盛りの状態として詠まれました。「手折る」や「かざす」という言葉がそれをあらわしています。

紅葉の掛軸は秋ものを代表する画題です。緑の葉が黄から山吹の濃淡、紅の濃淡へとかわるどの色づきも綺麗です。

菊の掛軸

菊の掛軸は9月から11月頃まで掛けます。菊の花は日本の秋を象徴する花といえます。

大菊の気高さ、糸菊の繊細さ、小菊の可憐な愛らしさ。白、黄、紫、紅色と綺麗な花を咲かせてくれます。

「隠逸花(いんいつか)」という別名をもちます。

「暗闇でも、その清らかな香りでそこに菊があることがわかる。」という意味です。

「四君子」のひとつであり、秋の花として晩秋の寒さの中で鮮やかに咲くすがたが好まれました。中国で君子とは徳と学識、礼儀を備えた人を指しました。蘭、竹、菊、梅の4種の持つ特徴が、高い気品をたたえ、まさに君子の特徴と似ていることから、文人たちはこれらの花に美しくあるための力量と心構えを習いました。

国の花でもあるこの花は、鎌倉時代の後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)が調度品の意匠(いしょう)として菊文様を用いたことから、菊花紋章となり、皇室の紋になったといわれます。

菊の節句とよばれる「重陽(ちょうよう)の節句」では、寿命が延びるといわれていた菊を据え、栗ごはん、秋茄子(あきなす)、食用菊のおひたしや吸い物をいただき、膳と一緒に菊酒を嗜みます。菊湯に入り、菊枕で眠り、邪気を払います。菊に綿をかぶせ一晩おき、花の香りと露を含んだ綿で身を清める「菊の着せ綿(きくのきせわた」で、不老長寿や繁栄を願う行事が行われます。

菊の掛軸は「重陽の節句」にも掛けられ、美しい秋を象徴し、清らかな気品をたたえてくれます。

そのほかの秋の掛軸

芒(すすき)、桔梗(ききょう)、竜胆(りんどう)、萩、女郎花(おみなえし)、蔦(つた)などがあります。

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