寿ぎの掛け軸 ~めでたい掛軸~

寿ぎの掛け軸 ~めでたい掛軸~

慶事を寿ぐ(ことほぐ)掛軸で、祝儀掛けというところもあるようです。

ご結婚や記念日、祝い事など、多くは「ハレの日」のために飾ります。

かみさまを迎えるための掛軸なので、神兆や神の使いを表したもの・時節ものが多いですが、年中掛けにできる作品もあります。

お正月に旭日や紅白梅の絵の掛軸を掛けるのも寿ぎの室礼(しつらい)です。

旭日・波涛など

古来、日本人は自然の中に多くの神を見出し、そこに畏敬の気持ちを抱いて向かい合いました。

太陽を拝んで礼し、大波を波涛と呼んで寿ぐその感覚は現代にもちゃんと通じるようです。

鶴の掛軸

鶴は古代中国では伝説の仙界に棲む鳥とされていました。    そのため鶴は吉祥と長寿の象徴で、日本では昔話にもよく登場し、「鶴は千年、亀は万年」などカメと共に長寿の象徴とされています。

鶴は霊鳥の代表で、一度番(つがい)を決めたら一生相手を変えないとも言われて吉祥・繁栄と家庭円満を司る画題として人気があります。

双鶴だけをシンプルに描いたものや、松竹梅や松と一緒に描いたよりおめでたい図も。

高砂の掛軸

松は冬の間も枯れずに常緑であるところから、古来「千年の常盤木」とも呼ばれて安寧や繁栄・めでたいことの象徴とされてきました。

また雌雄別株であることは夫婦を連想させます。    世阿弥はこのようなところから着想を得て、尉・姥を登場人物とし、また和歌の永遠なることを願って『高砂』という後世に残る「能」を書いたのだとされているようです。    千歳の松・長寿・遠く隔たっていても睦まじい夫婦といった『高砂』に含まれる要素や、「相生」が「相老い」に通じることなどから、高砂の尉(じょう)と姥(うば)の図柄はいつしか夫婦和合や共白髪(ともしらが)といわれる偕老長寿の象徴となっていきます。

こうして室町時代以降現代にいたるまで「高砂や」に始まる謡は婚礼における祝言歌の定番となり、歌い継がれてきました。

婚礼や夫婦の記念に欠かせない一幅です。

蓬莱山・蓬莱島

蓬莱は古代中国、道教の神仙思想にある伝説で、古代中国で東の海にあると考えられていた仙人が住むといわれる仙境・東方三神山の一つです。

通常、普通の山水画は「水に流れる」と言って婚礼などの慶事には掛けないものですが、蓬莱山は山水画の中に楼閣や松・鶴亀などが描かれていて、お正月などのめでた掛けのほか、様々な慶事に使うことができます。

もちろん年中掛けにも掛けられます。

紅白

何時の頃からか、日本では紅白はめでたいものとなり、日本画の世界でも紅白梅など赤と白でめでたさを表す画題が出てきました。

紅白梅をはじめとして紅白牡丹、紅白南天など、華やかなモチーフが多くあります。

松竹梅

松竹梅(しょうちくばい)は、慶事・吉祥のシンボルとして日本では祝い事の席で謡われたり、引出物などの意匠にも使われてきました。

元々は、中国宋代に始まった、中国の文人画で好まれる画題のひとつ歳寒三友(さいかんさんゆう)が日本に伝わったもので、冬の極寒の中でもその色を絶やさない松・竹・梅の三つを意味します。

3つ一緒に描かれることが多いのですが、単体や2種でも描かます。

松と竹は寒中にもその緑を絶やさず、また梅は寒中に花開きます。

これらは「清廉潔白・節操」という文人の理想を表現したものとされて日本に伝わり、江戸時代以降民間で「目出度い」ことの象徴として流行しました。

松・老松・稚松

冬でも青々とした葉を付ける松は「千年の常盤木」とも呼ばれて不老長寿や変わらぬ繁栄、めでたいことの象徴とされてきました。

また、正月に家の門に飾る門松には神を出迎えるという意味があるといわれ、魔除けや神が降りてくる樹でもあります。

見事な枝ぶりをした風格ある松を繁栄を重ねたことの象徴として「老松」とも呼び、反対に地中から生えたばかりの小さな松を「稚松」または「若松」(どちらも読みは「わかまつ」)と呼び、これからの繁栄を意味するものとなります。

他にも「松原」や「根上がり松」、「懸崖の松」など松を題材にした作品は多くあります。

慶事のほか、年中掛けにも掛けられます。