ブログをご覧の皆様こんにちは。
10月30日(水)~11月5日(火)
9階骨董品売場・古忨堂店内にて
『天目展 -過去から現在』を開催しております。
出品作家の一部をご紹介いたします。
◎瀬戸 毅己 (天目展ご案内画像の右上の作家)
SETO Takemi
1958生まれ
彫刻を専攻していた大学在学時から陶芸に興味を持ち、卒業後は愛知県立窯業訓練校で学びました。
志野、青磁、黄瀬戸、織部など、彫刻とは違う物を表現できることに惹かれ独学で様々なものを焼きました。
1990年(平成2)頃、国宝展で見た曜変天目に感動を覚え、同時期に横浜中華街で出会った書籍『中国陶磁史』の中にあった釉薬の組成を調合して、禾目天目の焼成に成功しました。
このことをきっかけに曜変天目の再現にのめり込んでいくことになり
数年後、漆黒の上釉の中に含まれている金属化合物を焼成により複雑に結晶化させることで、青いきらめきと微妙な虹色の光彩を放った星紋が浮かび上がる曜変の特徴を捉えた作品の制作に成功しました。
窯内の微細な変化が作品に与える多大な影響を考えて、あえて不安定で手間のかかる 灯油窯を使用して年に数十回窯を焚いています。
それでも満足のいく作品は数点のみですが、足利義政から織田信長へと伝えられ、本能寺で失われたといわれる伝説の曜変天目を想いながら、独自の曜変作品を作り続けています。
1958年 神奈川県小田原市生まれ。
1981年 東京造形大学彫刻科卒業。
1982年 愛知県立窯業訓練校修了。志野の研究を始める。
1992年 黄瀬戸の研究を始める。 1996年 青磁・天目の研究を始める。
2002年 日本経済新聞 10月19日号 天目掲載。 2007年 朝日新聞 6月17日号 曜変天目掲載。
◎九代長江 惣吉 (天目展ご案内画像の左下の作家)
NAGAE Sokichi Ⅸ
1963生まれ
板東平氏の流れをくむ長江家は15世紀中頃、美濃から尾張に移り住み、瀬戸市上品野 に築城した武家の家系とされます。
江戸中期から窯業に携わり、五代時代には「素山 窯」を築窯しました。代々当主は惣吉と名乗り、現在は九代目です。
九代の父である八代惣吉が大徳寺龍光院所蔵の曜変天目(国宝)を見たことで長江家は家業の染付製造の傍ら曜変の再現にのめり込んでいきました。
そんな父への反発もあり最初は曜変に興味はなくとも、1995年(平成7)に八代惣吉が急死したことで家業を継ぐことになり
翌年、中国の陶磁学会から招請されて訪ねた福建省・建窯の窯址で陶片を実際に見て 感銘を受けたことが曜変天目の研究を始めるきっかけになりました。
本人は家業を継 がなければ文化人類学の研究をしたかったというほど学者気質なこともあり、
中国・ 宋代に国宝の曜変天目が焼成された建窯の現地調査で原料の究明など、宋代と同じ手 法による制作の研究を行いました。
研究の成果として自身が納得し曜変と名付けられ た茶碗は2006年(平成18)に制作した二碗のみですが、
再現だけでなく新たな創作にも力を入れていて、研究の過程で得た技術を使った独自の美しい光彩を持つ作品を作り出しています。
制作では窯での焼成が最も大切ということもあり、密教での「火天」という火の仏を本尊にし、
南北朝時代に描かれた火天の仏画軸を大切に所有しています。
作品の印の一つは梵字の「ア」を簡略にしたもので、火天を意味する梵字(種子)の「あ」です。
そして阿吽の呼吸の阿であり、大日如来 の種子も「あ」でもあります。
1963年 愛知県瀬戸市生まれ
1983年 瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科卒業 大阪芸術大学入学
1995年 父 八代 長江惣吉の死去に伴い曜変再現研究を継承
1996年 中国古陶磁研究会に招請「瀬戸天目陶瓷」論文発表
1998年 九代 惣吉襲名
2010年 東洋陶磁学会研究会にて「曜変の再現制作の研究、その光彩について」発表
2016年 NHK ETV特集「曜変~陶工・魔性の輝きに挑む~」出演
2017年 曜変・長江惣吉展/瀬戸市美術館 中国福建省建陽政府より招聘を受け国宝の曜変の分析研究発表を行う
建陽電視台と福建電視台福建に曜変研究報道にて出演
曜変天目・瀬戸天目に関する学術論文多数発表
☆今年は国宝である曜変天目茶碗が三碗同時に展示され、話題となりました。
再現不可能といわれていたこれらの曜変に迫る作品をはじめ
油滴天目や木葉天目などの本歌に倣った作品や、
古典から進化し本歌には無い独自の作風を確立したものなど、
日本、中国、台湾の近現代の作家による様ざまな天目を展示いたします。
国や時代を超えて多様な進化を遂げた「天目」をどうぞご覧下さい。
この他にも様々な作品を展示販売しております。
どうぞ9階 書画・骨董品売場 古忨堂へお越し下さいませ。